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コスト理論と見積ソフトについて

 

コスト構築理論とものづくり情報

加工品の見積の方法について、弊社見積ソフトと対比しながら解説します。
一般に製品の見積りには、以下のような情報が必要になります。
①.品目情報(図面や仕様書)
②.部品表(部品構成表)
③.工程手順情報(工順)
④.生産ロット
ここでは、加工品のみを対象に見積のしかたと弊社の見積ソフトについて述べます。

加工品の見積のしかたと留意点
 

加工品の見積について、以下にその求め方を紹介します。

  加工品のコスト = 材料費 + 加工費 + 運賃

そして、各コスト構成要素の求め方について述べますと、

 

  材料費 = 材料単価 × 材料使用量 + (1+材料管理費比率) 

          ± スクラップ費

 

  加工費 = 加工時間(所要時間) × 加工費レート

  運 賃 = 輸送費 + 輸送管理費 + 利益

 

になります。
さらに、コスト構成要素について、詳しく述べていきましょう。

 

1.材料費
材料単価は、「今、その材料を買ったらいくらか。」という購入単価を設定することになります。

材料使用量は、加工品を作るために使った量(消費量)ではなく、作るために必要になる量(使用量)を求めることになります。
量は、一般に重量で示されます。

具体的な例で考えましょう。
段付きシャフトを10本製作しようとしているとします。
材料は、素材の直径を決めて、製品長さ+切断代+仕上げ代が必要長さになります。直径と必要長さから重量を求めます。

 

そしてもう一つ、端材の部分を製作した段付きシャフトに割り付けることになります。これが、材料使用量(重量)になります。
弊社の見積ソフトの材料使用量は、必要長さをシステムが計算しています。現在、端材は考慮していません。
なぜ、端材を考慮していないのかというと、材料には、複数のサイズ(定尺材)があり、どれを選択するかによって端材の量が変わってくるからです。

また、量産をベースにした場合には、1本の定尺材から何本の段付きシャフトが取れるかを計算し、1本の重量から取り数で割って、段付きシャフト1本の重量にします。

 

材料管理費比率は、費用について「誰が、何のために使ったのか。」を考えると、原材料の調達のために発生した費用は、材料に加えるべきであるからです。
これは、生産体制によって異なるものですが、一般には3%(比率)程度を設定します。

 

スクラップ費は、少量の生産では考慮されていないようです。量産において、スクラップが売れる、あるいはスクラップを処理するのにお金がかかる場合に考慮されます。

 

2.加工費

 

(1).加工時間
加工時間は、所要時間とも呼ばれます。この加工時間は以下のように求められます。

 

  加工時間 = ( 標準作業時間 / 労働効率 ) + 段取時間

標準作業時間は、正味作業時間に作業の打合せや朝礼などの一般余裕時間を加えて時間になります。
正味作業時間は、以下のような時間から構成されています。

  正味作業時間 = 手扱い時間 + 機械時間 + 付帯時間

 

手扱い時間は、材料を加工に取り付けて、加工完成品を機械から取り出す作業者による時間になります。
この手扱い時間は、作業の動作が定型化(パターン化)できますので、標準時間を設定することが可能です。

 

機械時間は、機械が材料を加工している時間のことです。
 

具体的に、旋削加工であれば、外径加工や端面加工などで、転削加工であれば、平面加工や溝加工、側面加工などの詳細工程があります。
機械時間には、加工条件が必要になります。また、このほかに加工する品目の材質や刃物の材質、設備機械の剛性なども考慮する必要があります。
さらに、エンゲージ角やゼロカット、ステップバックなど加工の理論的な追加時間も含めることが必要です。
これらを含めて、機械時間が求められることになります。

付帯時間は、作業動作の定型化(パターン化)しにくい、あるいは特定の加工品の場合のみ発生する追加の作業時間のことです。

 

労働効率は、工場の生産性を示す指標のことです。
具体的な例を挙げますと、作業できるのですが材料が来ない、作業指示を待っているなどのように仕事をできるのに手を付けられない状況がどの程度あるのかということです。

 

段取時間は、作業をするための準備のことです。段取り時間については、内段取り作業の時間を設定します。

弊社の見積ソフトの加工時間の算出は、加工条件も設定されており、付帯時間を追加できるように項目も設定してあります。
また、労働効率および段取り時間も設定してあり、変更も可能になっています。


(2).加工費レート
加工費レートは、チャージや単金、賃率などとも言われ、1時間や1分などの単位時間あたりの加工費のことです。
また、加工費レートは、発生するコストをとらえる単位(コストセンター)ごとに設定します。具体的には、もの(品目)を作る主体が、設備機械になりますので設備機械とその設備機械を動かす作業者になります。
右に加工費レートの構成要素を示します。

 

設備費率と労務費率は、製造現場で発生している設備機械と建物および作業者の費用について、単位時間あたりで表したものです。
設備費率は、単位時間あたりの設備費用のことで、操業度や生産数量に関係なく一定金額の費用の発生する設備固定費と操業度や生産数量に比例して費用の変化する設備比例費の2つに分けることができます。
そして、設備固定費率は、単位時間あたりの設備機械および建物の減価償却費のことです。
設備比例費率は、単位時間あたりの設備の動力費や修理費、消耗工具費などのことで、直接原価計算の区分に活用できます。

労務費率は、製造現場の作業者の賃金や賞与などを単位時間あたりに置き換えた金額のことです。


また、職場共通費率および製造経費比率は、生産部門内の製造現場以外で発生している費用のことで、これらをコストセンターに割り付けます。

そして、生産部門以外の費用を割り付けるのが、一般管理・販売費比率です。
最後に会社の利益分を加えます。これが利益率です。

3.運賃
運賃は、製品を納入するために発生する費用です。
この運賃は、会社や取引品目によって表示されないことがあります。それは、この費用が、一般管理・販売費の中に含まれているケースです。
取引品目が小さく、まとめて納入できる場合には、1個あたりの費用が微々たるものになるからです。また、納入場所との距離が近く、品目の持ち運びが容易である場合も同様です。
これに対して、大物でトラックに数台しか乗らない品目のような場合には、必ず忘れてはならない費用になります。

輸送費は、輸送のための費用です。そして、輸送管理費は、輸送を計画したり、スケジュール管理などに発生する費用です。
一般に外部に委託している場合には、提示された金額となります。ただし、精密機械などについて、固定治具を使ったりすれば、その費用を考える必要があります。
弊社の見積ソフトには、この運賃の設定はありません。

以上が見積りに必要なコスト構成要素です。

4.コストダウンに重要な工順設計
見積を進めるにあたっては、どのような作り方をするのかが重要になってきます。
つまり、どのような設備機械を用いて、どの順番で製作するのかということです。
弊社見積ソフトでは、作り方についてシミュレーションを行うことができます。そのうえで、最適なコストによる工順を設定することができます。
ここには、大きなコストダウンのポイントが含まれていることがあるからです。

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